n番煎じ・銀魂を考えたい

この春、私は幼い頃好きだった「銀魂」を、大学受験が終わったタイミングでもう一度読み始めました。

 

幼かった私は、シリアスパートを理解する力に乏しく、今までシリアスパートは避けてきました。

しかしついに手を出しましたよ。「将軍暗殺篇」に。あそこに手を出すと止まらないですね、最終回まで。

 

最終回まで一気に読み進めた後、ある2人について思いを馳せてしまいました。

土方十四郎高杉晋助

 

この2人、銀さんと対峙して戦うシーンがそれぞれありますよね。おそらく、この2人は銀さんとどこかしら共通点を持っていて、銀魂が銀さんを通して伝えたい「強さとは何か」を伝えるためにいなければならない存在なのではないかと思うのです。

 

まずは土方さん。

土方さんは、初期から銀さんと対照的であるようで、似たもの同士として扱われることが多いですよね。背中合わせで戦っているシーンも、銀魂の中で一番多いのではないでしょうか。銀さんの横にいるべきはやっぱり万事屋の新八と神楽だけど、”ニコイチ”感があるのは土方さんじゃないですか?

土方さんは作者さんが元々主人公として描こうとしていたこともあってか、第二の銀さんのような立ち位置ですよね。新八や神楽は「銀さんの背中を追いかけている」感がありますが、土方さんは隣に並んで共に戦っている感じがあります。

ですが土方さんは「シリアスパート以外での第二の銀さん」という感じで、銀さんの根幹に関わる部分に出てくる存在ではなかったというか、銀さんと土方さんの”ニコイチ感”は表面的なものだったように感じます。

そんな土方さんですが、初めて土方さんが根幹の部分で第二の銀さんとして描かれたのが「さらば真選組篇」の、封鎖された屯所を前に銀さんと土方さんが話すシーンです。

あのシーンで、土方さんにとっての近藤さんと、銀さんにとっての松陽先生が重ね合わされていたように思います。

過去の銀さんと同じ境遇に立たされた土方さんを見た時、初めて土方さんは第二の銀さんなのだなと強く思いました。お兄さんの事件で一度大切なものを失い、そこからまた真選組という大切なものを得た土方さんと、攘夷戦争で全てを失い、そこからまた万事屋という大切なものを得た銀さん。

江戸という街で出会い、共に大切なものを守るために強くなってきた銀さんと土方さんが、再び大切なものを失ってしまうかもしれない危機に瀕した時、もう二度と守るべきものを無くさない。銀さんが土方さんに言った「お前ならまだ両方守れんだろ」という言葉は、あの頃より強くなった銀さん自身に向けて言った言葉だとも思うのです。

 

次に、高杉。

 

言わずと知れた銀さんのライバルですね。しかも、ほぼシリアスパートにしか登場しない。間違いなく、銀さんの過去や根幹に深く関わる人物でしょう。

 

今まで数々のシリアスパートに関わってきた高杉ですが、おそらく実際に銀さんと対峙したのは初めての長篇である「紅桜篇」以来2度目?(記憶が曖昧なので自信ありません💦)

 

「紅桜篇」でかの有名な「俺はただ壊すだけだ。この腐った世界を」というセリフを吐いた高杉と、そのやり方を許せなかった銀さん、ヅラが決別。

それ以来、過激な攘夷活動を繰り広げていく高杉。対照的に、江戸の町で「万事屋」として様々な人々のいざこざに首を突っ込んでは解決し、人々・街との絆を育てていった銀さん。(と、穏健派攘夷志士として自分の信じる「良い国づくり」を模索し奮闘していたヅラ。)

 

お互いに攘夷戦争で負った傷を抱えながら、それぞれが違う人生を歩んできた銀さんと高杉が、敵として対峙することになってしまう「将軍暗殺篇」。

 

銀さんは、松陽先生の説いた、「自分に負けずに、大切なものを守るために戦う強い『侍』」の信念からはずれ、ただ「すべてを壊す」ために道を外れたテロ行為とも言える攘夷活動をする高杉が許せなかった。

 

一方で高杉は、自分と同じくらい松陽先生を慕い、大切に思っていたはずの銀さんが、松陽先生が死ななければならなかったこの世界で、何もせずにのうのうと生きていることが許せなかった。

 

二人が決別した後に歩んできた人生がもたらした帰結として、お互いに違う立場の上で関係してしまった「将軍暗殺篇」の動乱の中で、ある種ケジメをつけるために、どうしてもいつかは戦わなければならなかったのだと思います。

 

幼い頃に松下村塾で出会い、何度も刀を交わし、ともに過ごしてきた銀さんと高杉。松陽先生に対する思いも、同じくらい強い二人。

銀さんは高杉であり、高杉は銀さん。

 

お互いに相手の気持ちが手にとるように分かるからこそ、お互いが大事にしてきたもの(銀さんは、松陽先生の信念を守るということ。高杉は、松陽先生が死ななければならなかったこの世界への憎しみ)への思いの強さも手にとるようにわかる。

 

私は、銀さんは銀さんで、「松陽先生が死ななければならなかったこの世界でのうのうと生きている自分」が正しかったのか、高杉は高杉で「松陽先生の信念に反した活動をしている自分」が正しかったのか、ずっと悩んでいるが、今まで自分が歩んできた道が正しいのだと証明するために、そのことを通して、攘夷戦争後歩んだ人生の中で手にした大切なものをもう二度と失わないために、もう一方の選択肢を選んだもう一人の自分に勝たないといけなかったのではないかと思う。

 

ここまで文字にしても、私はまだすべてを消化し切れていない。

銀さんと高杉が戦わなければならなかった理由、お互いに実は一番生きていて欲しい、辛い思いをして欲しくないはずなのに、敵として戦わなければならなかった運命の残酷さ...

 

これらに思いを馳せると胸がきゅーっとなる。なんて切なくて、アツい漫画なんだろう。

銀魂はただのギャグ漫画ではない。

本当の「強さ」とは何か。向き合うことの大切さ。大切なものであるほど、それは苦しい。

 

人生において大切なことを教えてくれる。